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「隣組」マインドにご注意を:日経ビジネス電子版 - 日経ビジネス電子版

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 東京など7都府県に緊急事態宣言が発出されてから、半月が経過しようとしている。この間に、緊急事態宣言は、全国に拡大された。都民に告知されていた外出自粛要請の内容も、夜間の外出に特別な注意をうながすなど、日に日に峻厳さを深めつつある。

 私自身の暮らしぶりは、新型コロナウイルスの感染拡大以前と比べて、さほど変わっていない。というのも、1990年代以降、プロフィール欄に「引きこもり系コラムニスト」であるとか「岩窟ライター」といった文言を書き並べていたことからも明らかな通り、私は、元来が出不精で、だからこそアームチェア・コラムニストという仕事を選んだ人間でもあるからだ。

 COVID-19をめぐる騒動がはじまるずっと以前から、私の活動範囲は、自宅を起点とした半径500メートル以内にほぼ限られている。その徒歩圏内から外に出る機会も、週に1回ほどの頻度に過ぎない。
 とはいえ、生活習慣に特段の変化がなくても、世間の空気が変わってしまったことの影響は感じている。

 たとえば、テレビがつまらない。
 個人的に、このたびのコロナ禍は、意外な置き土産として、地上波テレビ(電波で送信される同時中継のテレビ放送)という枠組みに、最終的な死亡宣告をもたらすのではなかろうかと思っている。

 緊急事態宣言下のテレビのつまらなさには、ざっと考えて二つの原因がある。

 一つ目は、テレビの制作現場が、「三密」(密閉、密集、密接)を避けるべく努力した結果、通常の制作体制を維持できなくなっているところから来ている。
 二つ目は、われら視聴者の側が、テレビを楽しむための条件として、画面の中に求めていた「三密」が、このたびのコロナ禍のために拡散してしまっている事情のせいだ。

 まず、一つ目の理由について説明する。  テレビの制作現場が「三密」の崩壊によって、機能不全に陥っている現在の状況は、逆に、これまで、テレビが「三密」を前提に制作されていたことを物語っている。
 と、制作現場の人間が「三密」を避けた結果、

  1. スタジオ内の出演者たちが、感染を防ぐための適切な距離(ソーシャルディスタンス)を保った位置取りをせねばならなくなった。それゆえ、ナマ収録に色々と支障が出ている。
  2. スタジオ内での収録や、ロケ地(←許可が出ない)での撮影も含めて、ドラマ、取材VTRなどの撮影、編集(←編集室は換気ゼロだったりします)が不可能になったため、完パケ商品としてのVTR素材の制作が困難になった。

 こうなると、現場は、動きがとれない。
 ライブでの放送も、録画素材の収録も難しいということになると、テレビのコンテンツ制作は事実上停止してしまう。

 で、地上波の各局は、NHK、民放ともに、スタジオの人数を削減したり、再放送の番組枠を増やしたりすることで番組テーブルを埋めているわけなのだが、これが、視聴者の側から見ると、実になんともまるで面白くない。

 と、ここにテレビをつまらなくする二つ目の原因が生まれる。
 一つ目と二つ目は、似たようなことのようでいて、まったく別のできごとだ。
 制作側が従事するコンテンツ制作が「三密」を前提としているのは、実作業上の必然というのか、人間の集団がなんらかの表現物を協働の中で制作する際の約束事みたいなものだ。言ってみれば、コンテンツは、「人間」の「血」と「汗」と「涙」の中からしか生まれないという、なんだか猛烈に泥臭い話でもある。

 一方、視聴者の側から見たテレビの面白さが、「三密」に依存している事実は、われら人類が、結局のところ社会的な動物でしかないことを物語っている。少なくとも無料コンテンツが大衆的な人気を維持し続けるためには、「他人」の「息遣い」だの「体温」だのといった生身の身体性を放射し続けなければならないわけだ。実にうっとうしいことに。

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April 24, 2020 at 03:03AM
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