「Googleマイビジネスとは、ローカル検索で表示される施設・店舗情報を優先的に加筆修正でき、利用者に対してアピールできる無料サービスである」というのは、ローカルビジネスコンサルタントでGoogleマイビジネス ゴールドエキスパートの永山卓也氏だ。
オンラインで行われた「Web担当者Forum ミーティング 2020 春」に登壇した永山卓也氏は、「Googleマイビジネス」の活用法とローカル検索について解説し、Googleマイビジネスに寄せられる口コミ対応などについてもアドバイスした。
ローカルビジネスコンサルタントでGoogleマイビジネス ゴールドエキスパートの永山卓也氏
Googleローカル検索とは何か
永山氏は、Googleマイビジネスの話をする前にまず「Googleローカル検索とは何か」について整理した。というのも、“Googleマイビジネスとはどういうものなのか”という認識が世間一般でまだあやふやな部分があるためだ。
Googleマイビジネスは「ローカル検索に対応するツール」と言い換えることができるが、ローカル検索に対して結果をより良いものにする手段は、Googleマイビジネスだけというわけではない(永山氏)
このため、まずはローカル検索がどのようなものかを明確にしておく。たとえば、Google検索をしたときに「これは地域の施設・店舗を案内すべきキーワードだ」とGoogleのシステムが認識すると、以下の図のような検索結果が表示される。Webサイトがずらっと並んだ検索結果ではなく、地図を含んだ検索結果画面が表示されている。これがローカル検索である。
表示されている地図や「さらに表示」ボタンがあれば、それをクリックすると、Googleマップに移動する。もちろん、Googleマップ上でも検索できるので、それも含めて、ローカル検索だ。スマホで検索した場合はローカル検索が当たり前になっているので、意識せずに使っている人も多いだろう。
スマホの普及で、人々の検索行動も変化
スマホが普及することで、人々の検索行動も変化している。たとえば、昔と今の検索行動を比較すると以下のようになる。
昔
パソコンで「〇〇が美味しいお店」を検索→検索結果の中からよさそうなお店のWebサイトを閲覧→メニュー、予約電話番号や場所・行き方を確認→来店
現在
スマホで「〇〇が美味しいお店」を検索→GPS情報から近くのお店がローカル検索の結果として表示される→ナレッジパネルの情報や地図を確認→来店
もちろんWebサイトが不要ということではなく、より詳しい情報を知りたくてWebサイトを閲覧する人もいる。しかしスマホの小さい画面では、あれこれ調べるまでもなく検索した画面に表示されるナレッジパネルの情報だけでいいというケースも多々ある。
ローカル検索について永山氏がまとめたのが、以下の内容だ。
従来の「Webサイトを探す検索」と「施設情報を探すローカル検索」の大きな違いは主に以下の2点である。
- 現在地など検索者の環境が検索結果に作用する
- 店舗側が発信した情報だけでなく、ユーザーの編集内容や投稿した口コミ・写真なども表示される
現在地が検索結果に作用するということは、小規模店舗だとしても近ければ上位に表示されるわけだ。つまり広告を大量に出す資金力がない店にも、チャンスがあるということ(永山氏)
Googleマイビジネスとは「情報を優先的に加筆編集できるサービス」
ローカル検索の結果、施設・店舗情報が表示されるこの「ビジネス情報」のことを「Googleマイビジネス」だと思っている人をよく見かけるが、厳密にはそうではない。
Googleマイビジネスとは、ローカル検索で表示される施設・店舗情報を優先的に加筆修正でき、利用者に対してアピールできる無料サービスである(永山氏)
情報自体は、Googleマイビジネスを登録したオーナーだけでなく、Googleが自動的に登録することもあるし、ユーザーが撮影した写真や口コミも投稿できる。3者それぞれがもたらす情報によってできている。
そのため、Googleマイビジネスに掲載されている情報が100%正しいとは限らない。たとえば、自分のお店の電話番号や営業時間が間違っていることも場合によってはある。「Googleマイビジネスに登録する」ということは、優先的に情報の修正などが行えるようになるということなのだ。登録は、Googleアカウントさえあれば無料でできる。
Googleマイビジネスの活用目的とは
Googleマイビジネスの活用目的は、ほとんどの場合「お客様に利用してもらうこと」にあるだろう。お客様に利用してもらうためには大きく分けると2つのポイントがある。
- 利用者に評価されること
- Googleに評価されること
1. 利用者に評価されること
Googleマイビジネスを活用し、利用者から評価されることで、来店してもらう/お店を気に入ってもらうことが期待できる。利用者に魅力を伝える個別要素には、以下のようなものがある。
- 定期的な更新(常に正しい、最新の情報が表示されるように)
- 魅力的な写真や動画の投発信
- 魅力的な内容の投稿記事
- 魅力がわかる商品やサービスの情報整備
- 魅力が伝わるような、お客様からの口コミや投稿
たとえば、以下の図でどちらのお店に魅力を感じるかは、一目瞭然だろう。
Webサイトとの大きな違いが口コミで、その対応が不安という人もいるかもしれない。もちろん、チェーンビジネスなどで本社一括管理のため、店舗レベルの対応にならざるを得ない口コミの返信は、対応できないこともあるだろう。状況に応じたさまざまな判断があってもいい。
ただ、環境が整い返信が行えるのであれば、積極的に返信対応した方がいい。クレームを書かれたら、きちんと対応して、改善内容を伝えたり、誤解を解消したり、自分たちの魅力を伝える場として使うことができれば、それを見ているユーザーがサービスを利用する後押しになる(永山氏)
また、口コミを集めるには、デジタル以外の施策も重要になる。たとえば、以下のようなことだ。
- 会計時に声掛けをする
- 口コミを促進させるPOPやチラシを用意する
- DMを使う
口コミを報酬やプレゼント、値引きを条件にお願いするのはポリシー違反でNG。しかし、違反するような値引きなどを行わず利用者が自ら書きたくなるような「声掛けやトーク、POP、チラシ内容を工夫すること自体はGoogleは推奨しており、口コミが集まりやすくなる」と永山氏は言う。
その他、以下のような点にも気を配っておく必要がある。
- 常に「これで魅力が伝わるか」という視点で更新/発信する
- チェーン店などの場合、情報整備や記事投稿、口コミ対応など各項目ごとに、どのポジション(店舗、エリアマネージャー、本部など)で対応するか決めておく
2. Googleに評価されること
目的はもうひとつあり、それがGoogleから評価されることだ。これには、2つの意味がある。
① 検索結果での上位表示
一般的には、Googleマイビジネスの整備は、「上位表示に効果がある」とされている。これに関する指標がGoogle公式ドキュメントで言及されている。「情報を最新の状態に保つ事」と「関連性」「距離」「知名度」である。上位表示に関して改善を望むなら、競合店が多い激戦区になればなるほど、この要素すべてを含めた総合的なアドバンテージが求められる。
この中で、来店する前に指名で検索されるような、いわゆる知名度に関する部分はGoogleマイビジネスで情報整備を行っても効果は非常に限定的になってしまう。そういう場合、たとえば最寄り駅の近くでチラシを配り認知を高めるなど、アナログな施策が非常に効果的という場合もある。
業者に依頼する場合は、内容を精査する必要がある。Googleのガイドラインに違反する方法で施策を行う事業者もあるからだ。その結果、施設情報が公開停止などになってしまい、復活できなかった例も多い。
② キーワード認識(関連付け)
ローカル検索では、商品・商材・サービスが関連付けられていることが重要だ。それらが関連付けられていないと、そのキーワードでの検索結果に表示されないので、機会損失になる。ローカル検索は検索者の現在地などが影響するため、キーワードが関連付けられていれば、検索者の現在位置によってはどんなキーワードでもチャンスがある。
たとえば、中華料理店で夏になったので「冷やし中華」を始めた場合、「冷やし中華」というキーワードが関連付けられていないと、「冷やし中華」で検索した結果には表れない。外出自粛に対応するため、いつもはやっていないテイクアウトを始めても、Googleがそれを認識していないと、ローカル検索の結果には出てこない。キーワードが関連付けられるために必要な個別要素は以下のようなものである。
- Googleマイビジネスの投稿機能で季節限定メニュー、新規サービスなどに言及して投稿する
- 基本情報、属性情報の設定
- お客様にビジネス情報の口コミで魅力を伝えてもらう
- 自社のWebサイトに詳細情報を追加する
- 「店舗名+商品名(サービス名)」で検索される
見てわかるように、Googleマイビジネス内で施策が可能なのは上の2つだけだ。Webサイトやその他の方法(チラシや広告などで検索を促す)と組み合わせて施策を行うことが重要になる。
インサイトデータの活用
Googleマイビジネスは、アクセス解析機能も備えている。どのように活用できるか簡単に紹介する。
① 「検索数」を見る
「Googleで検索してお店の施設情報が絡んだ総数」が合計検索数だが、直接検索・間接検索の数や比率によって、今後のGoogleマイビジネス運用や店舗づくりについての気づきが得られる。
- 直接検索が少ないなら、知名度を高めて指名を増やす
- 直接検索が多いなら、知名度を生かした告知を行う
- 間接検索が少ないなら、キーワード化される語句を増やす
- 間接検索が多いなら、リピート化させる仕組み作りを考える
② 「アクション数」を見る
検索した人が施設情報を閲覧し、実際に興味を持って何か反応した件数が「アクション数」である。「Webサイトへのアクセス」、「ルート検索」、「電話をかける」、「メッセージを送る」といったアクションが、どれだけあったかを調べられる。「お客様になる可能性の高い件数」として、ローカル検索対応の指標に利用するといいだろう。
また、ルート検索が異常に多い場合は、場所がわかりにくいのかもしれないし、Webサイトへのアクセスが異常に多い場合は、ビジネス情報が不足しているために見に行っている可能性もある。このように、課題点をあぶりだすことにも役立つ。Webサイトを運用してGoogleアナリティクスを活用しているのであれば、Googleマイビジネスで設定する各URLにパラメータを付与することで詳しく分析することもできる。
③ 「検索クエリ」を見る
検索されたキーワードもGoogleマイビジネスで見られる。お店側が考えていたクエリが、ここに出てこないということは、検索需要がないか、Google側では語句が店舗情報と紐付いていないということである。一方、同じキーワードでも、Webサイトは検索結果に表示されるのに、ローカル検索では表示されないという場合、検索語句が店舗情報に紐付いていないと考えられる。
セッションでは、主にローカル検索最適化という視点で解説された。永山氏は、「Googleマイビジネスの活用が軸となるのは事実だが、すべてではない。それ以外にも店舗オペレーションや店内POPなどのアナログ施策、Webサイトの整備など、さまざまな領域にもローカル検索を効果的に運用するための要素があるという意識で向き合うべき」とまとめた。
Googleマイビジネスに関するFAQ
セッションの最後に、永山氏はセミナー視聴者からGoogleマイビジネスについての質問を受け付け、それに応えていった。その中から、比較的多くの人の役に立ちそうな内容を簡単に紹介する。
【Q1】店舗を多く持つチェーン店の場合、1店舗ずつメンテナンスできない。一括で更新するツールや方法はあるか?
「CSVの一括更新」という機能があるので基本情報などの整備は、この機能を使うことで対応できる。ただし投稿など使えない機能もあるため、店舗やエリア毎で店舗管理の作業を行った方が運用しやすい場合もある。多店舗一括投稿はサードパーティ製ツールで提供されているものもある。
【Q2】Googleマップで検索したら、一本隣の道のストリートビューが出る。
店舗情報が置かれたマーカー(ピン)に最も近いストリートビューのポイントが表示されるため、マーカーの位置が隣の道に寄っている可能性がある。
その場合には、マーカーをマイビジネスの管理画面にある住所の欄から移動できるので、調整すると良い。また、私道や細すぎる道、または新規造成地などの理由で店の前まで公道のストリートビューが届いていない場合には、撮影業者に依頼したり、自分で公式ストリートビューのアプリを使い撮影したり、適切なポイントにアップするという方法もある。
【Q3】企業の場合、投稿や更新をする意味はあるか? レストランやカフェなどのように、目新しいものはあまりないが、頻繁に投稿した方がいいのか?
企業の場合、「インプレッションを高めたい」とか「閲覧数を増やしたい」という意図がなければ、頻繁に更新する必要はない。ただし、求人などで使う方法もある。Googleマイビジネスの情報で職場をアピールするなど、いろいろな使い方ができる。
【Q4】投稿する時の文章も重要か?
重要。閲覧者に対してもGoogleに対しても、写真だけでは魅力が完全には伝わらない。魅力的な文章とともに内容をまとめるべき。また、あまりに長い文章はお客様に受け入れられるかも考えること。キーワードを沢山入れるとか、ただ並べるだけでは駄目。魅力的かどうかを客観的に考えて精査を。
【Q5】口コミを書いていただくに当たって、2000円のギフト券を差し上げますというのは?
Googleのポリシーで、値引きやプレゼントなど対価や報酬を渡すかわりに口コミや評価をしてもらう行為はすべてNGになっている。
【Q6】悪い口コミをされた時の対処法は?
まず事実かどうかを確認する。事実でない場合、そのまま放置すると他の閲覧者が誤解してしまうため、事実でない旨と理由を添え返信する。店を間違って口コミを書いている場合もあるので、「お店をお間違えでしょうか」などと加えるといい。事実の場合にはその問題が修正可能かどうかで決まる。修正可能ならその旨を返信し、事前に伝わらなかった事を謝罪しつつも「そういうお店だ」ときちんと伝えなければ同じクレームを生んでしまう。
どちらにしても書いた本人に返信しつつ、その先に多くの閲覧者が居ることを意識した内容を心がけること。
【Q7】ひとつの施設内で異なる事業(ジム、エステ、マッサージなど)をしている場合、マイビジネスのアカウントは複数作れるか?
条件によっては、複数の施設情報を作れる。たとえば、ホテルには複数のレストランなどが入っているが、それぞれ別の施設情報になっているはず(なっていなければ登録も検討すべき)。
施設登録の条件としては、入口や看板、屋号などが別々に存在していることや、Webサイトでそれぞれ施設情報が言及されていることなど、いくつかの前提が必要になる。
また、ビジネスが元々「中古買取販売」の場合などは「中古買取」「中古販売」といった形でわざわざ1つのビジネスを複数に分割して登録を行ってしまうと逆にアクセスが分散してしまい、総合力を高められず得策ではない場合もある。状況に応じた判断が必要だ。
以上、参考にしてほしい。
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