豊洲の港から 第2回定例会をレポート
NTTデータが開催しているオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」の第2回定例会が、2019年8月22日に開催された。
「豊洲の港から」は、複数の企業や人材が技術やビジネスを掛け合わせ、新たな事業を創発するオープンイノベーションが注目を集める中、ベンチャー企業、大手企業・金融機関・公共機関、NTTデータの3者を掛け合わせ、互いに「Win-Win-Win」の関係を構築し、事業化や協業の機会を創出する目的で開催されている。
2013年のプロジェクト開始以来、FinTech領域や、エネルギーマネジメント分野での事業化をすでに実現している。
「ユニファイドコマース」がテーマ
「ユニファイドコマース」をテーマとした第2回定例会。まずはNTTデータ オープンイノベーション事業創発室 室長 残間 光太朗氏(※取材当時の役職名を掲載しております)の挨拶でスタートした。
ユニファイドコマースは、店舗、ECの顧客情報をもとに、顧客ごとにマーケティングを実施する考え方を示す言葉。残間氏はユニファイドコマースについて、「個人の趣味嗜好が多様化していく中、O2O、オムニチャネルの次に来るものとして必須の概念」と話した。この日は160人の申し込みがあったとのことで、満員の会場の中でのセッションとなった。
ユニファイドコマースのコアとなるソリューションを目指す SELF株式会社
SELF株式会社 CFO 佐藤 史章のセッションからスタート。同社はウェブサイト・アプリに導入可能なコミュニケーションAI、会話型AIエンジンを開発している。
同社のチャットボットは、1問1答式のチャットボットとは異なり、ユーザーの属性や要素を会話で聞き出し、個々のユーザーごとに最適な提案をするという機能を持つ。
エイベックス アーティストアカデミーで採用したところ、コンバージョン率(ウェブサイト上の目標のうち、どれくらいを達成できたか)が235%にも増加したという。すでに大手企業が取引先に名を連ね、教育や金融、ヘルスケア、観光などで活用されているという。
「ユニファイドコマースで一番重要なポイントはパーソナライズ。パーソナライズで重要になる、ユーザーの要素をきちんと聞き出し、ユーザーに最適化した提案をするためのコミュニケーション自動化エンジンを開発しています。現代のニーズ、趣味嗜好や行動パターンはかなり多様化しており、ユーザーの複合的要素に対応した、ジャストな情報がユーザーに届いていない現実があります」(佐藤氏)。
販売員専用のアプリを開発 バニッシュ・スタンダード
株式会社バニッシュ・スタンダードは、販売員専用のB to Bアプリ「STAFF START (スタッフスタート)」を開発。代表取締役社長の小野里 寧晃氏は、ECの開発ベンダーの経験を持つ人物だ。
アパレルの公式通販サイトでは、スタッフがコーディネートなどをブログを書くという文化がある。 STAFF STARTは、これを発展させ、ウェブ上の接客をアプリに集約したもの。販売員はコーディネートなどを投稿し、それを見た顧客とコミュニケーションがとれる。投稿エントリーごとの売り上げが確認できるほか、商品が売れた際には、販売員にプッシュ通知する機能もそなえる。
「販売員のモチベーションにもつながります。ECの普及によって、実店舗にお客さんが来なくなるという現象が起きるんです。販売員のファンを増やせば、商品も売れるし、お店にもお客さんが来てくれるようになる。
すごく綺麗な外国人のモデルを使うようりも、販売員という等身大のモデルで、顧客からの共感を得る方が大事だと思います。アパレルだけでなく、コスメ業界、家電、飲食、ホビーなど、すべての小売 業界で活用できる仕組みです」(小野里氏)。
ユニファイドコマース向けAIを開発 株式会社GAUSS
株式会社GAUSSは、予測、画像認識、自然言語処理、音声認識などの技術を用いたソリューションを提供する企業。 各業界に対し、大学教授や社内の研究開発部隊を専任につけ、クライアントに合わせた研究開発ができる点、AIの実ビジネスへの活用を提案できる点が強みだ。
またこの日は、代表取締役の宇都宮 綱紀氏が、AI競馬予測「スポニチAI競馬予想 SIVA」を紹介。 SIVAは主に同社のプロモーション目的で運営されているというAI競馬予想ソリューションだ。
15年分の過去データと、SIVA独自のアルゴリズムを用い、馬毎のレーティングを実施。2000を超えるデータを基に、レースの勝ち馬を予測しているという。もともとは宇都宮氏の家族が競馬好きで、「お父さんが競馬で勝つと美味しいものが食べられる」という幼少期の体験からSIVAの開発に至ったというからユニークだ。
そんな遊び心のある宇都宮氏だが、「本業」であるソリューション提供では、アパレル業界で、モデル生成、管理画面への組み込みなどを効率化し、70%程度の手間を削減した実績もあるとする。2019年8月には三越伊勢丹イノベーションズからの出資も受け、今後ますます、ユニファイドコマース分野への貢献が期待される企業だ。
VR時代のプラットフォーム 株式会社Psychic VR Lab
この日最後のピッチは株式会社Psychic VR Lab。
同社はVR、MR時代のクリエイティブ・プラットフォームとして、ブラウザー経由でVR空間を構築し、配信できるサービスを「STYLY」を提供している。
取締役COOの渡邉 信彦氏は、「少し先の未来では、空間を切り替えながら生きることが当たり前になると思います。環境を切り替え、レイヤーを切り替えながら生きていく生活スタイルです」と話す。
渡邉氏はこの考え方をユニファイドコマースに適用し、「VRコマース」と呼ばれる概念を提案する。これは、VRを用いて「ブランドの世界観に没入する」空間を顧客に提供することを意味する。
「ウォークマンの登場がライフスタイルを変えたように、VRやMRが変革を起こすと信じています」(渡邉氏)。STYLYによって、全てのクリエイターがVR空間を作れる世界を構築していきたいと話した。
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September 07, 2020 at 06:00AM
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