新型コロナウイルスに伴うロックダウン（都市封鎖）で春や夏の休暇旅行をふいにした富裕層が５月以降、年末の旅行を予約し始めた。閉鎖されたリゾート地や空港、国境がいつ再開するかまだ分からないが、プライベートジェットで世界中を飛び回る富裕層は、１１月か１２月までに多少は旅行ができるようになり、追加費用で十分安全を確保できると確信している。
距離保ち１人６万ドル
アフリカでサファリツアーを運営するロアー・アフリカが新たに提案する旅「ロアー・プリべ」は金持ちの常連客にとっても豪華だ。８日間のツアー中は専属のパイロット、ガイド、バトラー（執事）、料理人、そして参加者が選んだ同行者以外と接触することはない。
この非常に社会的距離（ソーシャルディスタンス）を保ったツアー料金は、１人６万ドル（約６４０万円）から。ロアーは５月初めから、年末の「祝祭」シーズン以降のツアーを片手で数え切れない数の団体に販売した。
同社のデボラ・カルメイヤー最高経営責任者（ＣＥＯ）は旅費に追加費用がかかるため「（普段なら）決してこのツアーを販売しようとは思わなかった」と話す。だが平時でないこの瞬間には最高級という以上の魅力がある。同ＣＥＯは「ツアーを安全にするためにすべきことは何でもやる」と強調する。
ニューヨークの旅行コンサルタント会社ローカル・フォーリナーの共同オーナー、ルック・ラベリー氏は「リクエスト一つ来ない、静かな状況が数週間あった。実際、元に戻り始めたのは５月初めぐらいだ」と話す。
真っ先に来たリクエストの一部は、個人で旅行する手立てがある人々からだ。そうした旅行者は感染リスクを軽減するだけではなく、フライトの欠航や他の航空会社の混乱による影響も受けない。「彼らは必要ならすぐ出発できる。自由度が高い」とラベリー氏はいう。
もっとも、コロナ禍で世界の旅行は例外なく停止状態にある。米運輸保安局（ＴＳＡ）が管理する空港の検問所を通過した人数は３月初め以降、約９５％減少。国境閉鎖に伴い、同月にはプライベートジェット会社が顧客を断り始めた。
楽観と悲観の２種類
複数の旅行代理店によると、富裕層は主に楽観型、慎重型の２種類に分かれる。楽観型は秋に新型コロナの第２波が訪れる可能性はあるものの、出かけることに意欲的だ。特に予約の取消条件が柔軟な場合は、既存の予約を残しつつ、春と夏に逃した旅行の埋め合わせや、自宅待機中の気分転換、はたまた望み通りの行き先やホテル、別荘を押さえて新規の旅行を計画している。
一方、新型コロナのワクチンが利用できるようになるか、少なくとも事態がさらに安定するまでは旅行しないという顧客がより慎重な向きだと代理店は明かす。
そのどっちつかずの層もいそうだ。豪華な旅行を手掛けるインダガーレの創設者兼最高経営責任者（ＣＥＯ）のメリッサ・ビッグス・ブラッドレー氏は、中止になった旅行のトラベルクレジットを持つ人にはいささか緊急性があるといい、「クレジットの多くが年末までに期限切れになる。全てを使い切る十分な日数、部屋数はなく、選択肢がなければクレジットを失う可能性がある」と指摘する。
いずれにせよ「豪華で最高級の旅行が最初に戻ってくる」とみるのはジオグラフィック・エクスペディションのマネジングディレクター、ケイト・ドーティ氏だ。懐に余裕のある旅行者は空間やプライバシー、そしてスタッフのウイルス検査にも資金を出せるというわけだ。（ブルームバーグ Ｓａｒａ Ｃｌｅｍｅｎｃｅ）
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June 02, 2020 at 03:00PM
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