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「貸し」は効果的な手法。ビジネスに活かせる心理バイアス大全 - Lifehacker JAPAN

MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか』(グロービス 著、嶋田 毅 執筆、文藝春秋)の著者によれば、ある程度、論理的な思考ができる人でも陥ってしまいがちな罠が「バイアス」(思考の偏りや歪み)。

バイアスの怖い点は、ロジカル・シンキングを教えている教育者や、日頃はロジカルな経営者など誰もがそこから完全に逃れることはできないという点です。

(中略)それほどまでにバイアスは強力で、時には「嵌められてしまう」このも多いのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、経営学と絡めて紹介されることの多い、ビジネスパーソンに関連しそうな101種のバイアスをピックアップしているわけです。

ちなみにそれらのバイアスを知っておくことのメリットは、大きく3つ。

まず第1は、それらを「他者を動かす武器」として使うことができるということ。

第2は、自分の意思決定の質を上げられるということ。

第3の、そして最も重要な効用は、これらのバイアスを「悪用」しようとする他者からの働きかけに対して警戒心を持ち、それらを防げる可能性が増すことだといいます。

たとえばセールスに長けた人はさまざまなバイアスを知っており、それらをうまく活用して自社製品をお買い得と見せたり、彼ら自身の信用度合いを上げるようなテクニックを使ってくるもの。

そうした相手の「心理戦術」を防ぎ、ときには裏をかくこともできることは、バイアスを知る大きな効用であるということです。

きょうは4章「交渉/セールス/プレゼンテーションに影響する心理バイアス」のなかから、2つをピックアップしてみることにしましょう。

MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか

[返報性]「貸し」をつくるのは効果的

定義▶︎お返しをしないと気持ち悪いと感じるバイアス

人間は、他人に借りのある状態を好ましく思わず、それを解消したいという心理が強く働くもの。

心理学者ロバート・B・チャルディーニの有名な著書『影響力の武器』でも、この心理は最も強く、抗しがたい心理メカニズムであるとされているのだとか。

そして実際にこの心理を用いたテクニックが、セールスや交渉術、組織行動学の書籍などでよく紹介されているのだそうです。

たとえば、将来的に誰かからのリターンを期待するなら、日々少しずつでもいいので何かしらの「貸し」を作っておくと効果的です。ここでは、貸し借りの「精算」は、必ずしもその大きさが釣り合っている必要がないということが1つのポイントです。

場合によっては、ちょっとした相手に対するサポートが、その数倍になって返ってくることもあるのです。(106ページより)

なお、返報性のより厄介な特性は、実際には借りがなくても、「借りがある」と感じてさえいれば「お返しをしなくてはいけない心理」が働くこと

例を挙げましょう。Aさんが働きを認められて昇進したとき、先輩のBさんが「僕も上司にAさんのことを推薦しておいたから」などと言えば、それが嘘であったとしてもAさんは恩義を感じ、「いつかこの借りを返さなければいけない」と感じてしまうわけです。

架空の障害をでっちあげ、「私が話をつけておいたから」などというのも同様

また、交渉術の教科書に出てくる「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックもあります。

いったん過大な要求をし、拒否されたら、より妥当な(本来期待する落としどころに近い)要求を出し、それを認めさせるというもの。

その例として挙げられているのが、以下のやりとりです。

売り手「この中古車は有料なものですから、売価は500万円といったところでしょうか」 買い手「それは無理ですよ」 売り手「では清水の舞台から飛び降りたつもりで、400万円でどうでしょう」 買い手「(大幅に値引きしてくれたことだし、まあいいか)」 売り手「(これは期待通りの価格で売れそうだ)」 (107ページより)

つまり、実際には「400万円」は適正な価格ではないわけです。

しかし、こういうやりとりをすれば、買い手は「500万円から大幅に値下げしてくれた」ことに借りを感じ、「購買という形で応えなくてはいけない」と錯覚してしまうということ。(106ページより)

[フレーミング]「伝え方」が9割

定義▶︎本質的には同じ事柄であっても、枠付け(見せ方)の差によって違う印象を持ってしまう効果

フレームとは枠を意味し、フレーミングは「人の思考になにかしらの枠を設けさせる」こと

たとえば3万円のサービスを売ろうとするとき、そのまま「3万円です」と見せるよりも、「1日につき、(たったの)80円ちょっとです」と見せたほうが相手はお得感を感じるはず。

15万円程度の多少効果な電子機器も、「毎日のスタバのコーヒーを我慢すれば買える額です」と言われれば、購買意欲も増すわけです。

このように人間は、本誌売って木には同じことであっても、フレーミングのされ方で感じ方は変わってくるのです。当然、交渉術やセールスにおいては、相手が自分の条件を飲みやすいようにフレーミングすることがコツとなります。(108ページより)

また、順序を変えたり、率と実数を変えたりするというフレーミングも。あるワクチンについて、以下の2つの表現があったとしましょう。

「ワクチンとしての効果はほぼ100%保証されます。ただ、ごく稀に、10万人に1人程度の割合で、入院せざるを得ない副作用をもたらすことがあります」

「これまでに、全世界で1000人、入院騒ぎになる副作用がありました。しかしワクチンとしての効果はほぼ100%です」

(109ページより)

このケースであれば、「10万人に1人」がかなり稀な他人事と感じられるのに対し、「1000人」という数字はそれなりに多いと感じられるもの。

したがって、前者を好む人のほうが多いわけです。

他にも、立場を変えたり(例:顧客の立場から表現する)、数字の単位を変える、比較するものを変える(例:株の損失を年収と比較するのではなく、生涯賃金や総資産と比較する)など、フレーミングのテクニックもさまざま

それをどう使いこなせるかによって、他人を動かす力も大きく変わってくるということです。(108ページより)

MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか

このように、さまざまなバイアスがわかりやすく紹介されています。しかも決して難しいものではないので、すぐに活用できるはず。

ビジネスをよりスムーズに進めていくためにも、参考にしてみる価値はありそうです。

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