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(峰先生へのインタビューその1は こちら)
(同じくその2は こちら)
緊急事態宣言解除後の「湯加減」を知りたい
編集Y:峰先生のお話を聞いてきて理解できたのは、もうこれは、「社会は変わるんだ、元には戻らない」ということですね。そう思っていないと、感染が再拡大して医療体制の崩壊が起きてしまう。もしそんな事態が起きれば、新型コロナウイルスが引き起こす感染症、COVID-19だけでなく、それ以外を含めて、病気やけが人を診療してもらうすべがなくなるんだよ、と。
というところは理解できたけれど、じゃあ、飛沫感染・接触感染を避けるために、どの程度の我慢をすべきなんだろう。「その1」で、感染を避けるための基本的な考え方を教えていただいたわけですが、もっと具体的に、いわば「湯加減」を知りたいですね。
峰:湯加減。
編集Y:はい。温(ぬる)過ぎたら文字通り風邪を引いちゃうし、熱過ぎたら入っていることができない。しかも、これは「命令」じゃないから、我々は自分自身で判断し、なおかつ周りの状況を見ながら行動せねばならない。これって、すごいストレスですよね。
ワクチンが普及するまでこの状態となれば、「ゆっくり、リラックスしながら入り続けられる湯加減」を知りたい、と切実に思います。この辺のお考えを聞かせていただけませんか。
峰:そこはすごくいいポイントというか、まさに我が意を得たりの質問でありまして。まず、今、お湯加減と言っていただいたことを、私は「相場観」と呼んでいたんですけれども、同じことですよね。
編集Y:はい、まったく同じことだと思います。
峰:その相場観、お湯加減がどのぐらいだかが分からないせいで、緊張しちゃう人は緊張し過ぎて「もうすべて消毒しなきゃいけない」。緩む人は、「もういいだろう?」になってしまう。あとは、やけっぱちといいますか、「神風(かみかぜ)」願望。
編集Y:神風。元寇ですか。何か一発でこの状況を解決してくれる大いなる存在が登場する、という。
峰:そうそう。BCGだ、アビガン、ファビピラビルさえあれば大丈夫だ、みたいになっちゃう。そんな感じで振り切れてお祭りモードになっちゃう人がいるんですよね。そういった行動も観測していまして。
編集Y:でも、お話を伺って思ったのですが、峰さんはそれぞれの要素の効果を全否定しているわけじゃないんですよね。「分からない」と言っている。だから「××さえあれば大丈夫」と言い切るのは「(少なくとも現時点では)間違っている」と言っている。
峰:はい、そういうことですね。
編集Y:とはいえです。認知心理学とやらによれば、人間は「状況をコントロールしている」ことに最大の喜びを覚えるのだそうです。新型コロナ下でも、「状況をコントロールする方策があり、自分は自分自身をコントロールして、その方策に沿って動いている」という実感を得られるかどうか。その辺が、湯加減のカギになるんじゃないでしょうか……ということを、やっと読み始めた『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(ターリ・シャーロット著、上原直子訳、白揚社)からパクって言ってみたりして。
峰:その本読みました! 面白いですよね。
編集Y:おお! はい、分かりやすくて、自分に置き換えても納得できる話が多いです。
峰:事実だけで人の心は動かせない。それは確かにそう思います。ですが、「状況をコントロールできている」と、皆さんに納得していただくにはまず「この方策にはこれこれの根拠がある」という証拠、エビデンスは必須ですよね。
編集Y:はい、それはその通りですね。
峰:ですが、結論から言うと、具体的なもの、マスクひとつにしても、我々科学者はエビデンスを皆さんを満足させるほど明確に示すことができません。
編集Y:ええー?
「接触を8割減らす」って、具体的には?
峰:理論から出てくる結果を、具体的な社会生活に置き換えていく、という点では、科学って皆さんが思っているほど進んでないんですよ。いわば、「世の中を記述できない」んです。
編集Y:あ、化学や物理の教科書の説明に出てくる決まり文句の「なお、××は理想的な状態にあるものとする」ってやつですか。実際に教室でやったら違うかもしれないけど、ごめんね、と。
峰:そうそう。この場合はモデリングということになります。例えば、西浦博先生(北海道大学教授)が、「接触を8割減らす」と言っていましたよね。接触を8割減らす、って、具体的にはどういうことか、お分かりになりますか。
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May 29, 2020 at 03:12AM
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神風は吹かない、でも日本は負けないよ 分子ウイルス学、免疫学研究者・峰宗太郎氏インタビュー(その3) - 日経ビジネス電子版
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