折りたたみは、すでに実用的プロダクトでした。
数年前からスマホ画面の折りたたみ技術が研究され、昨年はいくつかのメーカーから折りたたみスマホが登場しています。
「画面を折りたたむなんて、模索段階のテストモデルなのでは?」…といったイメージを感じる方も多いかもしれませんが、実際のところはそうではありません。サムスンの「Galaxy Z Flip」は良い意味で普通に使えるスマホに仕上がっています。
ただし、人によって「便利」と「不便」が分かれる端末であることは確かなので、今回は、この端末を一週間利用して感じた、折りたたみ体験のポイントをまとめてみました。
これはどういうスマホ? → 画面が2つに折れ曲がる。パカパカケータイの再来
まずはこのスマホがどういった端末なのか? を説明しておきます。
メインとなる折りたたみ構造は、画面の上下が折れ曲がるスタイル。昔流行ったパカっと開くタイプの携帯電話と同じですが、こちらは1つの繋がった画面が折れ曲がるところに技術的な革新があります。
画面中央はメカニカルなヒンジによって折れ曲がります。
このヒンジの感触は、絶妙です。思っていたよりも抵抗感があり、好きな角度で固定可能。この機構は、サムスンの初代折りたたみスマホ「Galaxy Fold」よりさらに精密で、クオリティが上がっている印象です。
Galaxy Foldでは一般販売前の先行レビュー端末において、ヒンジ部のスキマからゴミが入る画面トラブルなどが報告されました。そのため、一般販売を伸ばしてヒンジ部の改修が余儀なくされた背景があります。
Galaxy Z Flipにはその時の教訓が活かされていて、ディスプレイパネルとのスキマは最小限。ホコリやゴミなどが極力入り込みにくい設計になっています。Galaxy Z Flipに防塵・防滴規格はありませんが、1週間使ったうちでは画面裏にゴミが入り込んだ形跡はありませんでした。ヒンジは2世代目になり、さらに完成度が増しています。
ディスプレイのフレキシブルガラスは、一般的なスマホのディスプレイほど固くありません。どちらかというとアクリルに近い触感で、手触りからも柔らかさが伝わるので、強く押しすぎない配慮が必要です。
また、この写真のように折り曲がる部分は黒い背景になるとシワが見え、指で触れると歪みの感触も感じます。だだし、実用には問題ないレベルでWebサイトなどを見ている分には気になりません。
私も最初は違和感を感じましたが、1日で慣れました。これを容認できるかどうかで、このスマホに向いているか否かが分かれるでしょう。
折りたたんだ状態はここまでコンパクト。iPhone SEが小さいとか言っているレベルではありません。
それなりに重さはありますが(約183g)、大型化により携帯性の低下する現在のスマホシーンにおいて、片手の中に収まるサイズは魅力的。ズボンのポケットどころか、シャツの胸ポケットにもすっぽりと収まりきってしまうサイズは昔なじみが故郷に戻ってきたような懐かしみも感じます。
処理性能→最新ではないにせよ、長い間の相棒になれるスペック
SoC(頭脳)は「Qualcomm Snapragon 855+」で昨年のハイエンドSoC。RAMも8Gと大容量で処理能力としては申し分ありません。micro SDカードに対応していませんが、本体ストレージは256GBと潤沢です。
バッテリーは3300mAh。数字的には大型ダントツに多いわけではありませんが、1日は十分に持つだけの容量。USB-Cでの有線充電に加えて、ワイヤレス充電、リバースワイヤレス充電にも対応しています。
最近のスマホはカメラ性能勝負になってきていますが、Galaxy Z Flipのカメラは…というと、アウトカメラは12MPのメインカメラ+12MPの超広角カメラという2眼構成でミドルクラス並。最新のフラッグシップ「Galaxy S20 5G+」の広角+超広角+望遠+深度カメラというリッチさには敵いません。
カメラで楽しむ端末ではありませんが、4Kでの動画撮影やポートレート撮影もOK。手ブレ補正も効きます。日常の中で風景や人物を撮影するのには十分です。
ちょっとした小技として、90度折りたたみることで、スタンド無しで手軽にセルフィーできます。折りたたみスマホならではのテクニックで、ビデオ会議などでも使いやすいスタイルと言えるでしょう。
折りたたみの→理にかなった恩恵と少しの不自由さ
画面を開く。折りたたみの携帯電話のようなパチッとしたフィーリングはないものの、スムーズに画面が展開する動きは、操作時の気持ち良さに繋がっています。顔認証の速度も速く(本体サイドに指紋センサーもあります)、端末を開くと間髪入れずにロック解除されるレスポンスの良さも優秀です。
そして登場する約6.7インチの縦長画面は、一度に表示できる情報量が多く、WebやSNSからの情報収集の効率アップに繋がります。縦長になると画面上部に指は届かなくなるものの、画面全体を縮小して左下・もしくは右下に集める片手操作モードもあり、大画面スマホの弱点も上手くカバーしています。
縦長の画面を活かして、別々のアプリを実行できるマルチタスクも機能的。
上部にYouTube、下部にSNSといった画面構成がお気に入りで、「ながら見」環境が簡単に実現できます。そしてなにより、これだけの大画面で高効率な端末が、折りたためば手のひらに収まってしまうという事実は、ツールとしてのスマホの可能性を感じさせられます。
そして使い終わったら画面を閉じる。一番大事で傷つきたくない画面を閉じることで物理的にガードできるのも安心できます。乱雑にポケットに突っ込んでおいても、画面が傷つく心配もありません。これは確かに理にかなっているデザインです。
かつての二つ折り携帯電話でもそうであったように、折りたたんだ状態では、小型の通知画面で時刻通知の有無(オレンジの●)も確認できます。また、充電終了までの時間を知ることもできます。
閉じたままでもこれら最低限の情報が確認できるのは、ある種ビジネスツール的な気配り。また、画面を閉じて終了するという操作には、マインド的なオン・オフの切り替え効果も感じられます。仕事と休憩とのメリハリを付けたい人にも良いプロダクトではないでしょうか。
一方で、「普段は画面が閉じている」という状態は、人によっては面倒に感じるかもしれません。
すぐに画面が見られる速度感に慣れていると、パカッと開くひと手間がストレスに感じるのです。
開く時は両手を使わなければなりません。今は自宅で利用しているため、両手が使える状態なのでまだマシですが、これが外出自粛が解かれ、電車移動でつり革に捕まりながら端末を開くとなれば、手こずることが予想されます。
画面の間に親指を差し込んで、手首のスナップでクイッ、パシーン!と勢いよく片手開きも不可能ではありませんが、本当に17万9360円のガジェットをこの勢いで開けてよいものか? と疑問にも感じますし、サムスンとしても画面のスキマに指を突っ込んで片手で開けるのは非推奨。やはり両手で開ける必要があるのは面倒なので、こちらも許容できるか否かで評価が変わってくるポイントです。
アリかナシか。Galaxy Z Flipの「もう少し!」ポイント
他にも使っていてもう少し!に感じたポイントもあります。
まず、5Gに対応していません。体験できる場所こそ限定されますが、5Gの高速通信に対応していたら理想的でした。
スピーカーのモノラル仕様も残念です。片手持ち状態でちょうど端末を下から支える小指がスピーカーにかぶさってしまうのはいただけません。画面は大きいものの、エンタメツールとしては、やや迫力に欠けるのが欠点。
また、ビジネスツールとして見ると、外部ディスプレイに接続してデスクトップ風に利用できる「DeXモード」に対応していないのは残念。ひょっとしたらこの端末だけで仕事をこなせるかも?という期待感があっただけに無念です。
こうして、製品としての完成度は高まっていますが、全てがパーフェクトというわけではありません。
コスト高ながらも、効率的な折りたたみスタイルへの先行体験
完璧で全部入り!なスマホではありませんが、小さい形態(携帯)で画面を大きくするには?という課題を、これだけの機構で、これだけの精度で、新しい技術で、実用的な折りたたみ端末として提出してきた事実を考えると、約18万円という価格も妥当に感じてきます。
しかし、冷静に考えるとエントリーミドルなスマホなら3台買えるお値段なので、爆発的に広がるかと言われたら難しいところ。やはり現状はごく一部の物好き(ギークな人々)を満足させるプロダクトであり、大衆が満足する製品ではありません。
それでも…です。
この大画面を小さく収めたGalaxy Z Flipのプロダクトデザインは、美しく、効率的で、所持欲を刺激します。それは今でこそ高級な先行量産型ですが、折り曲げるテクノロジーが一般化していくにつれ、ユーザーニーズに合わせたスタイルへと派生していくことも予想されます。
たとえば、おそらく私たちの働き方が変わるであろうアフターコロナの世界。ビジネスに向けたフットワークと情報量の多さを両立させる実用ツールとして、折りたたみスタイルが支持されていく可能性も大いにあるのではないか?と感じるのです。
手を出しづらい価格なため、すべての人が今すぐ必要とする機器ではないのは事実。しかし、今のうちに折りたたみアーリーアダプターになっておくのも、良き体験となるはずです。
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Source: Galaxy
Photo: 小暮ひさのり
"ビジネス" - Google ニュース
April 27, 2020 at 09:32PM
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折りたたみスマホ「Galaxy Z Flip」レビュー:未来のビジネスシーンを先行体験 - Lifehacker JAPAN
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