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「空気の読めなさ」の原因は:日経ビジネス電子版 - 日経ビジネス電子版

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 4月8日の緊急事態宣言からこっち、流れてくるニュースのざっと半分は、新型コロナウイルス関連の話題で埋められている。大変な事態だ。

 ところで、政府はこのたびの「緊急事態宣言」に際して、「発出」という、耳慣れない動詞を使っている。
 思うに「発令」という言葉の醸し出す緊迫感を嫌ったのだろう。

 たしかに、「発令」は、語感として、そのまま「戒厳令」を連想させる。お国としては、自分たちが強権を発動している印象を薄めたかったに違いない。
 で、選ばれた用語が「発出」だったわけだが、これは、多くの日本人がはじめて聞く言葉で、私自身、最初に耳で聞いた時は
 「なんだそりゃ?」
 「飛翔体かよ」
 と思った。

 でもまあ、初耳の言葉は、先入観に汚れていない意味で、フラットに受け止めてもらえる利点を持っている。
 してみると、お国はうまい言葉を見つけてきたのかもしれない。

 辞書を引いてみると、日本国語大辞典は、「発出」について
 「ある物事や状態が生じて外に現われること。また、現わし出すこと。」
 と説明している。

 ちなみに、「発令」には
 「法令、辞令などを発布・公表すること。」(日本国語大辞典)
 という、より具体的な語義が当てられている。
 この二つの言葉の辞書解説を踏まえた上で、うがった見方をすればだが、政府の中の人たちが「発令」(←「発令者」の意思の介在を感じさせる)でなく「発出」(←「発出者」の意思や責任とは関係なく、法令なり布告なりが「おのずから生じて外に現れ」出てきた印象がある)の方を採用した意図は、彼らが「宣言」の「責任」を取りたくなかったからだったと考えるのは、そんなに無理な解釈ではない。

 つまり、政府の人間たちは、このたびの「緊急事態宣言」を、政府の責任による布令ではなく、「天から降ってきた災厄」として印象づけたかったからこそ、「発出」などというホコリをかぶった古語を辞書の奥底から引っ張り出してきたわけだ……という、この解釈は、私の邪推と考えてもらってもかまわない。

 発令という言葉の大時代な響きにビビった、という、それだけの話なのかもしれない。
 ともあれ、宣言は発出され、街は閑散としている。
 で、いきなりの蟄居生活を余儀なくされているわたくしども罪なき衆生は、地上波テレビの圧倒的なつまらなさにあらためて驚愕したりなどしつつ、将来のおぼつかなさと、今ここにある手持ち無沙汰に苛まれている。

 そこへ持ってきて、首相の「コラボ動画」なるものが舞い込んできた。

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April 17, 2020 at 03:11AM
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