中国が急ピッチで整備を進める社会信用システムは、『1984年』的な監視社会をつくると批判されている。しかし、その監視の目こそがビジネスの安定化、高速化を実現しているという。特集『個人情報ゴールドラッシュ』(全6回)の#2では、個人情報を巡る監視とビジネスの裏腹な関係を解き明かす。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
中国は2020年までに
監視国家を完成させる?
「中国は比類なき監視社会を築いており、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』のような監視国家を2020年までに完成させようとしている」
これはマイク・ペンス米副大統領が18年10月4日にシンクタンク、ハドソン研究所で行った講演の一節だ。中国に対して極めて厳しい姿勢を示したもので、米中貿易摩擦の嚆矢となったという意味では歴史的講演といえるかもしれない。貿易の不均衡や南シナ海の領有権など広範な問題が取り上げられる中で、中国の監視社会化もやり玉に挙げられた。
注目すべきは「2020年」という具体的な年が取り上げられていることだろう。このことからペンス副大統領が念頭に置いていたのは、中国の「社会信用システム」であることが分かる。というのも、14年6月に発表された公文書「社会信用体系建設計画綱要(14~20年)」には、20年までに社会信用システム建設を完了させると明記してあるのだ。
さて、この社会信用システムとはいったい何なのだろうか?
「AI(人工知能)が国民一人一人の信用を格付けする」
「格付けされた信用スコアがお見合いサイトの評価として利用されている」
「監視カメラとGPS(衛星利用測位システム)で国民一人一人の移動履歴を全て把握している」
「二級国民扱いされると、飛行機や鉄道に乗れないという制限がある」
「犬のふんを片付けないと信用スコアが下がり、飼い犬を没収される」――。
このような、どこまで本当かよく分からないうわさが出回っている。ともあれ、中国共産党は体制転覆を恐れるあまり、デジタル技術を駆使したSF小説まがいの「監視社会システム」を構築しているというイメージが、ペンス副大統領が引用するほどにまで広まっているわけだ。
だが、このイメージは明らかに間違いだ。確かに中国が共産党一党独裁の国であること、そして政府に批判的な活動家や人権派弁護士を厳しく弾圧していることは事実だが、そうした弾圧においては最新のテクノロジーという、まだ有用性が確認されていない不確かなものは動員されない。民主化活動家の自宅の前に監視員が交代で居座るとか、ネットに政府批判の書き込みをした市民を派出所に呼び出して説教するといった極めて古くさい、そして確実なやり方で行われている。
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March 31, 2020 at 03:50AM
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